今週のお題「懐かしいもの」
自分にとって、テレビゲームというのは夢のような存在だった。
おもちゃ屋さんで、ファミコンを映すTVモニターにいつも釘付けだ。
でも、うちは貧乏だから買うことはできないって、いつも親父やおふくろに言われていた。
「あぁ、うちは貧乏なんだ・・・知らなかった」
ゲームやりたい、友達とゲームの話がしたい。でも持ってないからできない。
親父になんかいもおねだりする
「ゲーム買ってよ、ファミコンが欲しいんだよ。友達みんな持ってるよ」
「うちは、貧乏だからそんな金はない。生きるのに精いっぱいなんだ、お父さんこんなに働いているのにぜんぜんお金がないんだ」
「そっか・・こんなに働いているのに、泥とかいっぱいついてるし、ケガもしてるし、それでも金は貯まらないんだ。うちは、生きてくだけで精いっぱいなんだ」
いつしか、そうやって自分を納得させて、ゲームいいなと思い、自分で方眼紙(升目)に正方形を塗りつぶしながらマリオとか描いていた。
Aボタンでジャンプ、Bボタンでダッシュ。自分でコントローラーを描いて、ボタンを4つに増やした。
「Cボタンでパンチ、Dボタンでキック」だ。
ボタンがいっぱいあれば、いろいろな操作ができるぞ、すごい!
俺は、コントローラーにボタンを10個ぐらいつけて、それぞれ、アクションを割り振った。
パンチ、キック、だけじゃなく、寝る、挨拶する、ご飯を食べる、起きる。とかだ。
想像は楽しく、授業も聞いていなかった。
みんなからぼーっとしてるとからかわれた。
それでも、空想は楽しかった。なんせ、ゲーム買ってもらえないほど貧乏だからな。
考えるのは自由だ。お金もかからない。
そうやって過ごしたある日、家にゲーム機が来た。
ついに来たのか・・・!
兄貴が欲しがったので、長男を溺愛している両親はすぐに買ったそうだ・・・
すごく複雑だった・・・俺の願いじゃダメなん??
とにかく、ゲームだ!目を輝かせてみると。
ファミリーコンピュータ独特のベージュとエビ茶色っぽいうカラーリングでない。
「・・・???」
「SEGA??なにそれ??」
兄貴が言う
「俺はサファリハンディングがやりたいんだ」
どうやら、そのゲームがこの機械だけらしい。
ゲームをしている画面を見たが、どうもしっくりこない。
「・・・つまんなそう、ドットが荒いし、なんでこんなのがやりたいのかわからん・・」
今思えば彼は幼少期から変人だった。
値段はファミコンとほとんど変わらないそう。
なぜ?どうみてもファミコンのほうが性能よさそうに見えるんだけど?
音とかグラフィックとか・・・
「お前がやりたがっていたベースボールゲームも買ってあるよ!」
「まじ!やりたい!ちょーうれしい」
画面を見ると・・・・
なんこれ?これ野球??
俺はてっきり、下の画面のようなものが欲しかった。
・・・とにかく、そうして俺は念願(?)のゲーム機を手に入れた。
問題は、テレビが白黒テレビだったことだ・・・
無理やり電気屋さん呼んで、つけてもらったけど、2-3か月後に映らなくなった。
「おとうさん、映らないよ!直してよ!、早く、早く!」
・・・・・
「ねぇ!!」
「・・・うるせえ!!」
突然ゲーム機はけり倒されて、テレビは庭に向かって、ぶん投げられた。
それからゲーム機はあるが、デバイスがないため、ゲームはしばらくできなかった。
もちろん、クラスの子とはファミコンを持ってないため、ゲームの貸し借りもなかった
し、話もなかった。
ドラクエとか、ファイナルファンタジーとかなにそれ?おいしいの?
って思いながら、俺はずっこけ三人組というシリーズ本を図書室で借りてずっと
読んでた。
ついたあだ名は「ズッコケ本の虫」
なんで虫なんだよ?「くそ」とか思いながら、ファミコンを遠い目で眺めていた。